No.55 町田 洋 准教授
Researchers'
大学院人文学研究科
No.9 河西 秀哉 准教授
以前勤務していた大学は、キリスト教主義の学校で、聖書に触れる機会もありました。その中の一節です。大学においても、研究においても、自ら探求していく姿勢が大事だと思います。そうすると、きっと何かが得られるはずです。学生のみなさんは、是非、教員の研究室の扉をたたいてみてください。
象徴天皇制の歴史を研究しています。日本国憲法に天皇の地位は象徴と書いてありますが、はたしてそれはどのようなものでしょうか。私たちにとって、天皇とは何なのでしょうか。その歴史を研究し、今に至る過程を明らかにしようとしています。また、その中で、天皇が実際にどのように考え、行動したのかも研究しています。
普段の何気ない生活では、天皇制というものを意識しないかもしれません。しかし、歴史的に継続してきたこの仕組みは、日本社会の根本を形作るものの一つでもあり、様々な制度や慣習に影響を与えています。そして、家族、仕事、人権……など、日本社会が抱える問題の縮図が天皇制にも映し出されています。
この研究を通して、私たちにとって天皇とは何かという問題を明らかにするとともに、それだけではなく、日本社会の特徴を解明したいと考えています。
昭和から平成に変わる前後、中日ドラゴンズは優勝したにもかかわらず、天皇が病気ということで、優勝に関するイベントを自粛しました。その光景を見て、当時、小学生でドラゴンズファンだった私は、とても不思議に感じ、天皇制に興味を持ちました。
とはいえ、研究対象としようと思ったのは、大学に入学し、のちに恩師になる羽賀祥二先生(現・名大名誉教授)が講義の中で象徴天皇制の話(いわゆる「人間宣言」の意図の話でした)をされ、それに魅了されたからです。
歴史学は当時書かれたもの(史料)を読み、それに基づいて研究対象を明らかにする学問です。しかし、史料を読み進めても、知りたいことが書いていないこともたくさんあります。1日中、図書館などにこもっても、まったく成果がなかったこともあります。しかし、だからこそ、これぞといった史料を見つけたときの喜びは大きいです。
また、1つの史料を読んでわからなかった事柄が、いくつかの史料を組み合わせて読むとわかってくることもあります。自分がこうだろうと予想していた結論が、史料を読むことで変化していくときが、研究の面白さを感じる瞬間です。
私たちは、自分の研究成果を論文や書籍の形で発表します。大学院生の時、私が書いた論文は、なかなか専門家の先生方による審査を通りませんでした。何度も何度も書き直しましたが、自分の考える意図がわかってもらえるような文章をどう書いていったらよいのか、全体の論理は一貫しているのか、本当に悩み、くじけそうになりました。現在は少しは慣れましたが、今でもまだ同じように悩み、苦しむときがあります。
メディアでは、スムーズに話していると見られるようですが、本当は内心ものすごく緊張しています。講義でも実は同じです(笑)
私が研究を始めたときは、今ほど天皇について注目されていませんでした。このテーマをやめようと思ったことも、これまで何度もありました。続けていてよかったです。
象徴天皇制については、まだまだわかっていないことが数多くあります。それを少しでも明らかにしていくことが目標です。その成果を講義で紹介し、学生のみなさんが天皇制について考えるきっかけにしたいと思います。
また、多くの学生や院生と一緒に学んでいきたいです!
氏名(ふりがな) 河西 秀哉(かわにし ひでや)
所属 大学院人文学研究科
職名 准教授
略歴・趣味
名古屋市出身。2000年名古屋大学文学部卒業、名古屋大学大学院文学研究科に進学。博士(歴史学)。京都大学大学文書館助教、神戸女学院大学文学部准教授などを経て、2018 年10 月より名古屋大学大学院人文学研究科准教授。趣味は合唱(とはいえ、最近は忙しくてやれていません。そろそろ復活したい)。