No.53 藤井 慶輔 准教授
Researchers'
大学院工学研究科
No.11 神田 英輝 助教
私が以前所属していた民間研究所を作った松永安左エ門という財界人の言葉からとりました。今の社会システムは、失敗への許容度が小さいので、大胆に挑戦することが困難です。かといって、今後、AI等によって急速に変わる社会を生きていくには、個人も社会も挑戦して変わらなければならない場面が増えるはずです。そして、挑戦に失敗はつきものです。私自身も失敗は好きではないですが、失敗した時にはその分鍛えられたのだと信じて、少しでも挑戦していかなければならないと思っています。
有毒な化学物質を使わない物質の変換手法を研究しています。二酸化炭素や水、DME といった無害な物質を高圧にしたりプラズマ化することで高活性にして、これを用いて物質の抽出分離や、高圧流体の中でのプラズマ反応で無機有機の複合材料を作っています。対象はバイオ燃料、再生医療のための生体材料、高機能なナノ粒子、食用の天然色素など様々な分野に挑戦しているところです。
大学を出たときは就職氷河期で、学生時代の専門とは違う分野で民間就職しました。就職後は、休日に趣味のような形で学生時代の研究を続けていましたが、その内容を仕事にも活かしたいと思い、仕事の企画として考えたのがきっかけです。その後の企画会議の中で全く違う内容に変わったのですが、挑戦する人が少ない内容だったこともあり、国の競争的資金を獲得でき、大学で研究をすることになりました。
民間では、研究開発の内容と事業方針との整合性や採算性や実現可能性を厳しく問われます。審査の中で内容は磨かれていきますが時間がかかりますし、一度スタートしたら変更できないこともあります。また、良い成果ほど公表も厳しく制限されます。私は論文発表まで8年もかかりましたが、これでも良い方です。大学だとこうした制限が緩く、また、途中で脇道に逸れて計画外の挑戦的なアイデアを試すことも容易です。一方で、大学では世間のニーズを体感することが困難です。また、企業では学術的すぎて実施困難な内容も、大学だと社会に寄りすぎて、卒業研究や大学院生の研究テーマに向かないケースがあります。
民間にいたときは、プレイヤーとして実験を全て自分でこなしていたので、結果を最初に目撃したり、新たなアイデアを思いついた時が楽しかったです。大学では、プレイヤーだけでなく学生のマネージャー役でもあるのですが、彼らが自分でアイデアを出して自発的に取り組んでくれた時が嬉しいです。急速にAIが進歩しつつある世の中で重要になってくるのは、自ら問題を設定して自発的に取り組む能力なので、研究の面白さを通して学生にそのような能力を身につけてもらいたいです。
微細藻類という小さな植物を、下水処理水を用いて屋外培養し、そこからバイオ燃料を作るとともに、残渣を肥料として用いるプロジェクトを進めています。ちょうど日本で開発した装置を南アフリカに輸出して設置工事を進めているのですが、もし、微細藻類が光合成で獲得したエネルギーの範囲内でバイオ燃料を作ることができれば画期的な成果になります。多くの方々が関与するプロジェクトなので、様々な調整も重要になってきます。南アフリカでの工事や輸出入や免税について、関係機関との協議や手続といった仕事もあり、現地の政府機関だけでなくJICA や日本大使館に出向くこともあります。また、現地で感じたのは日本人が極端に少ない点です。日本の科学技術と経済に対する現地の印象が良いので、日本はもっとアフリカと交流しないと勿体ない気がします。
目標や意気込みとは少し違うかもしれませんが、一つでも多くのアイデアを出し、目の前にある事柄に一つ一つ立ち向かっていくだけです。微細藻類以外にも、全く異なる内容の研究を同時に進めているのですが、時々それらが組み合わさって、全く新たなジャンルやアイデアが出ることもあります。また、成果が実用に結びつくことが基礎研究としても重要になっているので、少しでも多くの成果で社会に貢献できるように頑張ります。
氏名(ふりがな) 神田 英輝(かんだ ひでき)
所属 大学院工学研究科
職名 助教
略歴・趣味
2000年京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了。同年電力中央研究所に入社。2011年JST さきがけ研究者。2012年名古屋大学大学院工学研究科助教。2015年JST/JICA-SATREPS代表。趣味は子供との散歩。
・動画紹介「Vol.20【バイオ燃料のジレンマ】乾燥不要!バイオ燃料生産のエネルギー収支問題を解決」(名古屋大学研究フロントライン)