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VOICE

大学院生命農学研究科

No.13 村瀬 潤 教授

My Best Word:煮られても、踏まれても、裂かれても、これがおれだというもの、それは一体なんだ。

 

Q:「My Best Word」を選ばれた理由は?

すいません、ちょっと長いですね。高校生のときに愛読したある詞集の一編で、実はまだ続きがあります。「…何があってもそれがなければ満たされず、何が欠けてもそれがあれば満たされるもの、それは一体なんなんだ。」

私の尊敬するドイツ人の研究者は、自身の研究のゴールを「己を知ること」と答えてくれました。「自分探し」とは違うと思いますが、どちらの言葉も原点に立ち返るときの道しるべになっています。

 

Q:先生はどのような研究をされているのですか?

食糧生産や地球環境保全の要である土壌に生息する微生物の多様性やはたらきについて研究しています。スプーン1 杯の土壌に数十億生息するともいわれる微生物が、土のはたらきにどのように関わっているか?現在は、専門家の間でもマイナーな扱いを受けてきた原生動物(ゾウリムシやアメーバの仲間)の捕食作用が他の土壌微生物に与える影響や、微生物間の相互作用が植物に与える影響に興味を持って研究を進めています。

 

Q:研究を始めたきっかけは?

今から四半世紀前、大学院博士課程の学生だったある日、水田土壌を顕微鏡で観察していたときに、偶然、原生動物を見つけたのが興味を持つきっかけでした。ある共生微生物特有の蛍光を発しながら顕微鏡の視野の中を優雅に泳いでいく姿を目の当たりにして、夜中に一人で歓声を上げたことを今でもよく覚えています。以来、成果は順調に、とはいっていませんが、幸いにも研究を継続しています。

 

東郷フィールドの田んぼ.jpg
東郷フィールドの田んぼ

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水田土壌から分離した新種のアメーバ
(バーの長さ10マイクロメートル)

 

Q:研究が面白い!と思った瞬間はどんな時ですか?

自分の経験や過去の知見から「妄想」という名の疑問が生まれ、そこから作業仮説を立て、それを証明するための実験や観察のデザインを組み立てて実行し、最終的に妄想が事実(たぶん)に変わる時。大学の研究者としての醍醐味を感じます。「面白いね」と言ってくれる人が隣にいるとき、その味わいは、さらに格別です。

 

Q:今年から東郷フィールド(附属農場)に教員として着任されたそうですが、「現場」である農場の魅力を余すことなくアピールしてください。

魅力を十分に伝えるには、着任してからまだまだ日が浅いですが、現場が近いこと自体が何よりの魅力だと思います。喧騒を離れて田んぼや畑で汗をかき、草地を歩き、ウシやヤギを眺めているだけで、東山キャンパスでは思いつかないアイデアや視点が「舞い降りてくる」こともあります。小さいながらも多様な所帯で、学際的な共同研究の場としても期待しています。農学部以外の皆さまの訪問もお待ちしています!

 

Q:くじけそうになったときは?ストレス解消法を教えてください。

どちらかというと、くよくよと考えてしまうタイプなので、よいストレス解消法があれば、是非、教えてほしいくらいです。強いて言えば、踏ん切り(あきらめ)がつくまで、くよくよ(よくよく)考え続けることでしょうか。あとは、体を動かすことくらいです。

 

Q:今だから言える、ここだけの話を聞かせてください。

学生(大学院博士課程)時代、学位取得後、そして、名古屋大学に着任してからと、それぞれの時期に東南アジア、ヨーロッパに滞在、研究する機会に恵まれました。こうした経験が縁となり、留学生担当教員を皮切りに、バンコク事務所ほか学内及び部局の国際交流事業に携わってきました。遡るとその始まりは、大学院修士課程進学時に下級生用のテーマとして立ち上がった海外のプロジェクト研究を「横取り」したことにあり、なんにも知らない後輩に今でも密かに感謝しています。

 

Q:今後の目標は?意気込みも含めてお願いします。

これまでは土壌微生物の生きざまを知るために、空間的にも分野的にも小さなスケールでの基礎的な研究が中心でしたが、今後は関連分野の方々と連携しつつ、その知見をフィールドレベルの土壌研究に活かしていきたいと考えています。

 

氏名(ふりがな) 村瀬 潤(むらせ じゅん)

所属 大学院生命農学研究科

職名 教授

 

略歴・趣味

1994年名古屋大学大学院農学研究科博士後期課程修了。滋賀県立大学環境科学部助手、名古屋大学大学院生命農学研究科助手、講師、准教授を経て2019 年1月より現職。趣味は鳥見と和弓。

 

 

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