No.53 藤井 慶輔 准教授
Researchers'
大学院理学研究科
No.14 荘司 長三 教授
「変わった研究だね」、「よくそんなこと考えるよね」と言われるぐらい前例のない研究をしていきたいと常に思っているからです。誰かに追随するような研究では、その研究者の単なるフォロワーに成り下がるだけでなく、ゼロからイチを生み出す重要な過程を学生が経験できなくなるため、教育面でも問題があると考えています。結果が出るまでは、周りから批判されることも多く、辛いのですが、批判されている姿を見せることも教育であるはず、との信念をもって異端化学を続けていきたいです。
緑膿菌が必須栄養素の鉄分を獲得するために分泌するヘム獲得蛋白質に、合成金属錯体のガリウムフタロシアニンを取り込ませた人工金属蛋白を作成し、これを緑膿菌に作用させたのち、赤色光を照射することで、緑膿菌を高効率に殺菌できるシステムの開発を行っています。このシステムでは、抗菌薬が効かなくなった多剤耐性緑膿菌も殺菌できることが明らかになり、実用化を目指しています。
緑膿菌のヘム獲得蛋白質の構造を見たときに、このヘム結合様式であれば、様々な合成金属錯体を結合させることができると直感的に予想できたのがきっかけです。その後の緑膿菌の増殖阻害や光殺菌などの研究は、スタッフや学生との議論の中で生まれた研究成果で、それまではこういった使い方をする研究が皆無でした。
学生の時の研究で、自分で合成した高分子が期待通りの高い性能を示した時です。得られた結果をパソコンの画面で見たときに思わずニンマリしました。自由に研究をさせてくれる研究室だったので、高分子のデザインも自分で考え、合成法もほとんど独学で進めていたので、喜びもひとしおでした。そんな経験もあり、研究に嵌まりました。
失敗を恐れずにいろんな場面で手を挙げて挑戦し、いろんなことを経験し、吸収して欲しいと思っています。今回の研究成果の記者発表は、D3の四坂君が担当しましたが、発表前は、失敗したらどうしようと、多少なりとも考えていたかもしれません(彼の場合は肝が据わっているので違うかもしれませんが)。私は両親から「あんたの失敗なんて、時間が経てば誰も覚えていないんだから、迷ったら前に出ればいいんだよ。」と育てられてきたおかげで、恥をかくことを気にしない性格に徐々に方向修正されていきました。同じように、私の学生にも恥をかくことを恐れずに前に出て欲しいと伝えています。教員の仕事は、学生が失敗した時に責任をとることと、事前のアドバイスや練習に時間を割いて成功に導くことだと思っています。今回の記者発表は、幸いにも四坂君のプレゼンが完璧だったので、傍観するだけで終わりました。
くじけそうになった時には、「子供の前では、いつもかっこいいお父さんでいなくてはならない」と考えるようにしています。情けないお父さんの姿を見せないように、と思うと、辛く自信がない状況でもなんとか乗り切れます。研究費獲得の面接等は、緊張することも多いのですが、自信に満ち溢れたかっこいい研究者(お父さん)を演じるつもりで臨んでいます。ストレスの解消法は、やはり子供と遊ぶことですね。公園でキャッチボールをしたり、プールに行ったりするだけで、疲れはしますが癒されます。子供が大きくなって遊んでくれなくなったら、趣味に没頭しようかと思います。
大学では空手部(週5日練習) に所属していたので、授業のためというより、道場にいくために大学に来ているといった惨状でした。学部生の時に、もっとしっかり勉強しておけばよかったなあと後悔はしていますが、空手を通して学んだことも多く、研究室の運営などでは空手部での経験が生きています。
多剤耐性緑膿菌の光殺菌やベンゼンをフェノールに変換できるバイオ触媒の開発など、特許も取得した研究成果を実用化まで発展させて社会に貢献することを目指しています。また、意外な発想の研究を生み出し、継続する過程を通しての人材育成にも力を注いでいきたいです。
氏名(ふりがな) 荘司 長三(しょうじ おさみ)
所属 大学院理学研究科
職名 教授
略歴・趣味
1975年生まれ。2002年千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了。奈良先端科学技術大学院大学博士研究員、名古屋大学大学院理学研究科助教、准教授を経て、2019年より現職。専門は、生物無機化学、酵素化学。
趣味:猫、コーヒー、ウクレレ、世界の蛍光ペン収集
・動画紹介「【連載第二弾!】名大理学オープンキャンパスシリーズ【化学科 研究紹介】」(名古屋大学理学部)
・インタビュー記事「天然ガス活用、『だます』のが名古屋流 」(名古屋大学研究フロントライン)
・2023/6/29 プレスリリース「脱炭素の加速へ―――メタン活用に新たな選択肢~酵素を"だまして"メタノールに変換する新技術~」