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VOICE

未来材料・システム研究所附属未来エレクトロニクス集積研究センター

No.15 田川 美穂 准教授

My Best Word:人間は悩まないと本当の力は出てこない

 

Q:「My Best Word」を選ばれた理由は?

姜尚中先生が「悩む力」(夏目漱石やウェーバーの価値観を基にした著書)で、そう説いています。博士課程時代に、悩みすぎておかしくなりそうだった時にこの本に出会い、「もっと悩んでいい」、「しっかりと悩む力が必要」と説かれたことで楽になりました。悩むことをポジティブに捉えられるようになって以来、どんな状況も受け入れられる耐性がついたと感じています。悩みがない人生なんてあり得ませんから。

 

Q:先生はどのような研究をされているのですか?

生体分子が自ら結合する相手分子を選んで結合し(分子認識)、精密に組織を作り上げていく原理を応用して、ナノ材料を自由自在に組み上げる手法を確立する研究を行っています。例えば、金属や半導体は、ナノサイズ化すると目で見える大きさのバルク材料とは異なる新奇な物性を示します。更に、それらをどのように組み上げるかによっても、また、物質の性質が変わります。これらの金属や半導体の粒子の表面にDNAを結合させて、DNAの分子認識能力を用いて組み上げることで、ナノ粒子の様々な結晶構造を作製することに取り組んでいます。

 

Q:研究を始めたきっかけは?

修士課程では、表面物理という分野の研究をしていました。研究は大好きでしたが、女性教員も女性の先輩もいない環境だったので、博士課程へ進学して研究者になるという選択肢を考えることができず、メーカーに就職しました。会社の図書館で手にした科学雑誌に、生体分子の自己組織化とナノテクノロジーに関する記事が出ていて、「こんな面白そうな研究があるのか!」と感心し、博士課程への進学を決心。物理とバイオの学際分野を研究する研究室で、DNAをナノテクの材料として扱う研究を立ち上げさせてもらいました。

 

Q:研究が面白い!と思った瞬間はどんな時ですか?

ナノサイズまで観られる顕微鏡をのぞいて、ナノ粒子が規則的に並んだ結晶が見えた時です!

  

研究を代表する写真.jpg
DNAの分子認識を利用して金ナノ粒子を超格子化し作製したナノ粒子の単結晶

 

Q:昨年度は、本学の「女性トップリーダー顕彰」、今年度は、ソロプチミスト日本財団女性研究者賞を受賞されるなど、研究業績のみならず、男女共同参画・女性活躍の観点からも先生のご活動が注目されています。公私ともに輝きを保つ秘訣とは?

輝きだなんて!実際は、毎日寝不足で時間に追われ、ヘトヘトです…。それでも楽しいと思えるのは、子供の時の感覚のまま、面白いと思うことを追求し続けているからだと思います。研究を志したいと思う若い女性たちが、諦めずに夢を実現できる社会にしたいと強く願っています。

 

Q:くじけそうになったときは?ストレス解消法を教えてください。

ストレスを解消する時間さえ取れない状況なので、解消されないままなんです。くじけている時間もなく、平日はワンオペで子育てをしながら大学教員をしている、本当にそんな状況です。でも夜寝るときに子供の寝顔を見ると、「ああ、明日も頑張ろう!」と思えるんです。

 

Q:今だから言える、ここだけの話を聞かせてください。

名古屋で2人目の子供が生まれ、1人で2人の乳幼児を育てるのは想像を絶する大変さでした。上の子の遊び食べ、下の子の食べ物ポイポイが激しい時期には、お風呂で夕食を食べさせていました(笑)。汚れてもシャワーで流すだけ。ついでにお皿も洗い、入浴もして…。「凄く良いアイデア!」と自分で感心していました。

あとは、夜寝るとき、次の日の服を着て寝ていたとか(自分自身も)、色々あります。非常識などと言われそうですが、常識的な生活をしていては乗り越えられませんでした。

今では、ちゃんと食卓で食事をして、朝、服を着替えてと…成長したなぁと思います。

 

Q:今後の目標は?意気込みも含めてお願いします。

DNAを用いることで、従来の方法では到底作製できないナノ構造を作製できるようになってきたので、今後は、そのナノ構造に起因する新しい物性を調べたり、応用したりしていきたいと考えています。また、材料工学分野のみならず、医工学との融合分野も開拓していきたいと考えています。それから、後輩の女性研究者をもっともっと増やすことも目標にしています!

 

氏名(ふりがな) 田川 美穂(たがわ みほ)

所属 未来材料・システム研究所附属未来エレクトロニクス集積研究センター

職名 准教授

 

略歴・趣味

都立武蔵高校卒。学部・修士は早稲田大学理工学部・理工学研究科で物理学および応用物理学を専攻。物性物理(特に表面物理)の研究に没頭した。メーカー勤務を経て、東京大学の博士課程へ進学。生物物理分野で博士号を取得。JSTのさきがけ研究員時代は、米国ブルックヘブン国立研究所でバイオとマテリアルサイエンスの融合分野の研究を進める。名古屋大学着任後は、単身で2児の子育てをしながら教育と研究に奮闘する毎日を送る。

子供が生まれてからは趣味の時間は全く取れませんが、子供と一輪車や鉄棒、縄跳び、ピアノ等を楽しんでいます。

 

 

【関連情報】

・動画紹介「《IMaSS未来予想図 第6弾》『DNAでナノ粒子を自由自在に制御する』」(名古屋大学未来材料・システム研究所)

2022/9/7 プレスリリース「混ぜるだけでタンパク質分子を封入可能なDNA修飾金ナノ粒子結晶の作製に成功!~ドラッグデリバリーシステムのキャリアなどへの応用に期待~」

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