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VOICE

総合保健体育科学センター保健科学部

No.16 坂野 僚一 准教授

My Best Word:今日一日

 

Q:「My Best Word」を選ばれた理由は?

今日一日を頑張ろう、今日一日が人生の最後の日と思って悔いのないように生きていこう、という思いから「今日一日」という言葉をMy Best Wordに選びました。今日一日、という言葉自体は熟語でもことわざでもなく、個人的に日々意識している言葉です。その日一日を貴重でかけがえのない大切な時間と捉えて人生を全うしたいと考えています。

 

Q:先生はどのような研究をされているのですか?

生体におけるエネルギー及び糖代謝の研究をしています。特に、生活習慣病の原因である肥満の病態解明と治療法の開発に力を入れています。また、中枢(脳)による糖代謝の調節機構の解明も行っています。将来的には、脳神経系を介した内科的治療の探索も行いたいと考えています。

 

Q:研究を始めたきっかけは?

私は、名古屋大学医学部附属病院糖尿病・内分泌内科に入局後、同大学院医学系研究科へ入学したことがきっかけで研究を始めました。当初は、他の医局員と同様に、医学博士号取得が目的でしたが、大学院卒業後、米国へ留学する機会があり、本格的に研究を始めたのはそれ以降です。その意味では、本当のきっかけは米国留学ということになります。

 

Q:研究が面白い!と思った瞬間はどんな時ですか?

新しいことを発見すると素直に面白い!と思います。また、研究テーマである肥満を追究するうちに、やがて「食欲」の研究をすることになり、更に言えば「欲」そのものの正体を、実験を通じて曲がりなりにも理解するようになりました。もちろん、複雑な「欲」というものを完全に解明し、理解できているわけではありませんが、それでも驚く発見はあり、仏教などで説かれていることと照らし合わせて、はたと膝を叩いたりすることもあり、研究は奥が深く面白いと思っています。

 

研究を表す写真 留学中のラボで誕生日祝い 中央の水色のセーターの女性が上司です.jpg
留学中のラボで誕生日祝い

中央の水色のセーターの女性が上司です

研究を表す写真 アメリカ肥満学会の一コマ.JPG
アメリカ肥満学会の一コマ

研究を表す写真 肥満になりにくいPTP1B欠損マウス.jpg
肥満になりにくいPTP1B欠損マウス(下)

 

Q:11月に「1型糖尿病の治療において、インスリンを使用しなくとも血糖値が正常化する新規治療法を見出した」との研究成果の記者発表をされました。本研究成果は「循環型研究資金」という制度の助成を受けたことでも注目されています。大まかに成果の概要をお教えください。

肥満研究をする上で、脂肪細胞から分泌されるレプチンは無視することのできない重要なホルモンなのですが、実は、インスリンが欠損した1型糖尿病モデルマウスでは、レプチンを脳室内へ投与すると、インスリンなしでも血糖値が正常化することが複数の研究から、既に報告されていました。ただし、末梢からレプチンを投与すると、高血糖はある程度改善するものの正常化しないため、臨床応用は困難だと考えられていました。私は、レプチン感受性亢進マウス(PTP1B 欠損マウス)を使った研究をしていたため、試行錯誤の末、レプチンとレプチン作用増強剤を併用すればインスリンを使用せずとも血糖値が正常化することを見出しました。今回いただいた助成金を使って、どうして1型糖尿病モデルマウスでレプチンとレプチン作用増強剤を併用すると血糖値が正常化するのか、その機序を明らかにしていく予定です。

 

Q:くじけそうになったときは?ストレス解消法を教えてください。

月並みですが、家族、友人に相談することです。また、地元の神社にもよくお参りします。困ったときの神頼みですね。

 

Q:今だから言える、ここだけの話を聞かせてください。

実は、大学院生の頃は研究が好きではありませんでした。専門医取得の延長で、学位も取得しておく程度の感覚でした。しかし、米国留学中にお世話になった上司のおかげで研究が好きになりました。私は、今でこそ健康ですが、若い頃は病気で進学が遅れましたし、大学も医学部の前に別の学部を卒業しており、標準的な医師のコースからはかなり逸脱した経歴の持ち主です。それでも臨床医をしながら大学で研究を行うことができることに自分自身驚いていますし、恵まれた環境に大変感謝しています。

 

Q:今後の目標は?意気込みも含めてお願いします。

目標は3つあり、①肥満の病態を解明し、治療法を見つけ出すこと、②中枢(脳)による糖代謝調節機構の解明、③脳神経系を介した内科的治療の探索、です。3つに共通することは、脳神経系による生体制御に関することだということです。これまで内科治療といえば、薬を飲んで、吸収された薬剤が血液を介して臓器に効く、といった方法が一般的でしたが、私個人としては、脳神経系を介した治療法というものを探索することに非常に興味を持っています。

 

氏名(ふりがな) 坂野 僚一(ばんの りょういち)

所属 総合保健体育科学センター保健科学部

職名 准教授

 

略歴・趣味

略歴

2011年名古屋大学医学部附属病院糖尿病・内分泌内科助教、2015 年同講師、2017 年名古屋大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌内科講師を経て、2018年より現職。

趣味

仕事が趣味になっています。臨床も研究も両方好きです。ちなみに、針灸や漢方薬といった東洋医療にも興味があり、時間があれば取り組んでいます。学生の頃はスキーにはまってしまい、勉強そっちのけで山にこもって練習し、一時期、インストラクターもしていました。

 

 

【関連情報】

研究紹介(名古屋大学総合保健体育科学センター)

研究者総覧