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Researchers'

VOICE

大学院理学研究科

No.19 森島 邦博 特任助教

My Best Word:人と違うことを恐れずに好奇心から新しいものを生み出す

 

Q:この言葉を選ばれた理由は?

新規性が求められる研究を進める上で必要なことだと考えて意識しています。自らの興味から始まる探究や挑戦の結果、世界を前に進めたり、価値観を変える可能性があるという点では、研究は、芸術などと並ぶ創造活動だと思います。僕の研究も物理学の分野では異質ですが、それを突き進めることで新しい手法や対象とする研究領域を広げていきたいです。

 

Q:先生はどのような研究をされているのですか?

宇宙起源の放射線である宇宙線を使って、原子炉やピラミッドなどの内部を非破壊で可視化する技術「宇宙線イメージング」の研究をしています。宇宙線は、絶えず地表に降り注ぎ、最大で数km級の物体を透過するため、X線レントゲン写真のように巨大な物体の内部を可視化できます。この技術を開発してさまざまな対象に適用する分野横断的な研究を進めています。2015年には福島第一原発の事故炉である2 号機内部で起きた炉心溶融の確認に初めて成功しました。2017年にはScanPyramidsという国際共同研究で、4500年前にエジプトに建造されたクフ王のピラミッドの内部に未知の巨大な空間を発見しました。

 

ScanPyramidsメンバーでピラミッドの解析結果を議論している様子.jpg
ScanPyramidsメンバーでピラミッドの解析結果を議論している様子

クフ王のピラミッド内部に発見した空間(白い点の集合で表現)の想像図.png
クフ王のピラミッド内部に発見した空間(白い点の集合で表現)の想像図

屈折ピラミッドの内部で宇宙線を観測する装置(原子核乾板)を設置している様子.JPG
屈折ピラミッドの内部で宇宙線を観測する装置(原子核乾板)を設置している様子

 

Q:研究が面白い!と思った瞬間はどんな時ですか?

世界初めて新しい事実を知ることが出来た、と確信した時です。原子炉の時もピラミッドの時も、その瞬間が一番エキサイティングでした。

 

Q:先生は、宇宙線観測によりクフ王のピラミッド中心部に未知の巨大空間を発見するなど、多くの人から注目される様々な研究成果を発表していらっしゃいます。現在は、エジプトだけでなく国内外に活躍の場を広げていらっしゃいますが、印象的な出来事を教えてください。

ピラミッド調査を始める時にScanPyramidsの記者会見が開かれたのですが、当日の内容を何も知らされずに出席したら、ものすごい数の報道陣が来ていて驚きました。このプロジェクトは純粋な学術研究ではなく、メディアも巻き込んでいることや観光産業という観点からも注目されるプロジェクトだということに気付かされました。このような異業種との協働プロジェクトは良い経験になっています。未知の空間の発見を公表した時の世界中からの反響は想像以上に大きなものでした。

 

Q:くじけそうになった時は?ストレス解消法を教えてください。

ストレス解消法の一つはサッカーを観戦することですが、名古屋グランパスの調子が悪い時は逆にストレスが溜まります(笑) 

 

Q:今だから言える、ここだけの話を聞かせてください。

エジプトで最初に調査をした屈折ピラミッドは、当時は一般公開されておらず、内部は真っ暗で大量のコウモリが住み着いていました。現地の人は、あのコウモリに噛まれると命が危ない、と言うので感染症対策の防護服を着ることになったのですが、エジプトの夏にその格好で作業するのは死ぬほど暑くて大変でした。その後、エジプトの偉い人と一緒に中に入る機会があったのですが、彼らは革靴にスーツという服装で入って来たので、結局、本当に危険なタイプのコウモリだったのか分からずじまいです。こういうことがエジプトではたまに起こります。

 

Q:今後の目標や意気込みを教えてください。

クフ王のピラミッド内部に発見した空間を自分の目で見たいと思っています。そのためにはピラミッドに穴を開ける必要があるのですが、許可を得るためには、さらに精度を上げた分析結果が必要なので、今も技術開発と調査を続けています。今後は、この技術を世界中の考古遺跡の調査にも展開する計画です。この他にも、社会インフラの老朽化検査や火山の観測、資源探査など多くの分野に活用できる可能性があるので、スタートアップの立ち上げも視野に入れて社会に役に立つ技術にしていきたいです。このような分野にとらわれない新しい研究に興味がある学生にはぜひ研究室に来てもらいたいです。一緒に研究しましょう!

 

氏名(ふりがな) 森島 邦博(もりしま くにひろ)

所属 大学院理学研究科

職名 特任助教

 

略歴・趣味

1998年私立滝高等学校卒業。2002年名古屋大学理学部卒業。2010年名古屋大学大学院理学研究科博士後期課程修了。博士(理学)。名古屋大学YLC特任助教、JSTさきがけ研究者(兼務)を経て、2019年より現職。専門は、素粒子宇宙物理学、検出器開発。趣味:写真、アート、サッカー観戦

 

 

【関連情報】

インタビュー記事「ナポリの地下事情に「宇宙線イメージング」が好相性。次なるニーズは東海に!?」(名古屋大学研究フロントライン)

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2023/3/3 プレスリリース「クフ王ピラミッドにある未知の空間を、多地点宇宙線イメージングの技術により、高い精度で詳細に特定!」

2022/10/13 プレスリリース「強力なレーザーを使ってエネルギーがそろった純度100%の陽子ビーム発生に成功-レーザー駆動陽子ビーム加速器の実現へ向けて大きく前進-」

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