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VOICE

大学院理学研究科

No.25 立原 研悟 准教授

My Best Word:常識にとらわれず、まずはやってみよう。自然はいつも私たちの予想を裏切る。

 

Q:この言葉を選ばれた理由は?

京都大学の山中伸弥教授がノーベル賞を受賞された時のインタビューで、「考えるより先にまずやってみる。考えるのは結果が得られてからで良い」と恩師から教えられたことがよかったと答えていました。物理学科にくる学生たちはみんな賢くて、自分の頭で考えることは、よくできます。でも考え過ぎて手が動かなくなってしまうことも目にします。試しにやってみたら、全く予想しなかった結果が出ることも良くあります。それが研究の面白いところであり、たとえ今は理解できなくても、立ち止まらずに前に進めば、いつか思わぬところから解決の糸口が得られると思っています。

 

Q:先生はどのような研究をされているのですか?

電波望遠鏡を使って宇宙を観測し、宇宙空間に漂う希薄なガスや塵の性質を調べています。それらは銀河の中で新しい星を作る材料となり、若い星が生まれてくる様子を、明らかにしたいと考えています。

 

Q:研究を始めたきっかけは?

子供の頃から、巨大なメカを自在に動かしてみたいとか、肉眼では見えない何かを望遠鏡で発見したいと思っていました。大学の研究室を選ぶ時、電波天文学がまさにそれだと思いました。

 

Q:研究が面白い!と思った瞬間はどんな時ですか?

私が主に観測している天体は暗黒星雲と呼ばれ、可視光線では真っ暗にしか見えません。でもその中には何かが隠れていて、電波の画像を解析すると、これまで見えなかった赤ちゃん星が姿を表すことがあります。何万光年離れていても、天体から放たれたかすかな光や電波はちゃんと地球に届いているのです。人類が持っている技術を使い、望遠鏡を向け、注意深く耳をすませば、星の産声を聞くことができます。それは本当に面白いことです。

 

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2011年10月、アルマ初期科学観測が始まった初日、
合同アルマ観測所の仲間たちと

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本学大学院理学研究科が所有するNANTEN2望遠鏡と
アタカマ砂漠にて

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アルマ望遠鏡で観測した星の卵
高密度なガスの塊で、新たな星の誕生の素となる

 

Q:先日、研究成果「星の卵の「国勢調査」アルマ望遠鏡が追う星のヒナ誕生までの10万年」を発表されましたが、この研究の中で印象に残っていることを教えてください。

実はこの研究と似た観測が、私たちよりも前にアルマ望遠鏡によって行われて、何も見つからなかったという結果が報告されていました。でも私の考えでは、それは観測方法や感度が不十分だったからで、そのことを知らない多くの研究者たちに、間違った結果が鵜呑みにされてしまうことに不満を感じていました。正しく観測すれば、正しい結果に到達できることを示せて良かったと思います。

 

Q:新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、様々な影響があったと思います。愛知県に緊急事態宣言が出ていた間はどのように過ごされていましたか?また、ストレス解消法があれば教えてください。

自宅でオンラインによる会議や議論することが多く、時間の使い方はむしろ効率が良くなったかもしれません。でも雑談や無駄な時間も人間には必要なことですね。出張に行く飛行機の中で、外の世界と切り離されている時間にも意味があることに気づきました。

8月末、少し状況が良くなってきた頃、ペルセウス座流星群が極大を迎えました。夜に妻と名古屋市内の見晴らしの良い公園に行きました。日本で流れ星を見たのは何年か振りでした。

 

Q:今だから言える、ここだけの話を聞かせてください。

望遠鏡のあるチリ・アタカマ砂漠は標高が高く、高山病になる危険もある土地なのですが、幸い私の体は適応しやすいようでした。それでも負担はかかっていたようで、毎回の出張で体重が数キロ落ちるのです。最近はアタカマに行けないせいで、お腹の周りが気になってきています。

 

Q:今後の目標や意気込みを教えてください。

天文学の分野でも観測や実験は世界中で止まってしまいましたが、宇宙は以前と変わらず、刺激的なままです。チリにある私たちの望遠鏡には、最新の装置が搭載され、観測の再開を待っています。その日が来るのが待ち遠しいです!

 

氏名(ふりがな) 立原 研悟(たちはら けんご)

所属 大学院理学研究科

職名 准教授

 

略歴・趣味

1999年名古屋大学大学院理学研究科素粒子宇宙物理学専攻修了。ドイツ・マックスプランク・地球外物理学研究所研究員、日本学術振興会海外特別研究員(ドイツ・フリードリヒ・シラー大学イェーナ)、神戸大学研究員、国立天文台助教(チリ・合同アルマ観測所サイエンティスト)を経て、2013年より現職。星形成や星間物質を観測的に研究し、NANTEN2望遠鏡の運用や開発も指揮している。

趣味は音楽鑑賞、ドライブ。 

 

 

【関連情報】

2021/3/10 プレスリリース「星は一人では生まれない?ガス雲衝突から始まる星団誕生の理解が進む」

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