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VOICE

高等研究院/トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)

No.26 水多 陽子 YLC特任助教

My Best Word:深く、豊かに、美しく観る。生命の秘密のその先へ。

 

Q:この言葉を選ばれた理由は?

私たちが知っている世界は、広い世界のほんの一部です。道端に咲く小さな花にも壮大ないのちのドラマが隠されています。その隠されたいのちのしくみを、イメージングを駆使して美しく観察し、遺伝子の働きを深く理解することで、初めて解き明かせるのでは、と考えています。生命に隠された秘密を、誰にも真似できないアプローチで明らかにしたい!という気持ちから、この言葉を選びました。

 

Q:先生はどのような研究をされているのですか?

世界には花を咲かせる植物がたくさんあります。花は植物がタネをつくり、いのちを次の世代へつなぐための器官です。私はタネができない原因や、より多くタネを作るしくみについて、独自の顕微鏡イメージングと遺伝子技術で明らかにしようとしています。タネができるしくみを知ることで、食糧増産や過酷な環境でもタネをつける植物を作るなど、私たちの暮らしをより豊かにすることを目標に研究に取り組んでいます。

 

Q:研究を始めたきっかけは?

小学校でメンデルの法則に出会い、生命が持つ曖昧さと精密さのバランスに興味を持ったのがきっかけです。両親が農学部出身で植物が身近な環境で育ったため、植物分野を選びました。一方で、5 歳から高校まで絵画を習い、美術系への進学も考えていました。そこで2 つを結びつけ、‘Science meets Art’、生命現象を美しいイメージングと遺伝子から明らかにする取り組みを始めました。植物を軸に農学、理学、化学と常に新しい分野を取り込み、今の研究に繋がっています。

 

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受け入れ教員の東山哲也ITbM教授、長男と

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YLC合同合宿(北海道大、東北大、本学)での
異分野融合研究ディスカッション

 

Q: 先生が参加されているYLCプログラム(*)の特色を教えてください。

ピラミッドや宇宙、古文書、数理モデル…、植物分野では見聞きしないような研究をされている先生がたくさんいます。そのためYLCのセミナーやシンポジウムでは、普段は絶対に出ない意見や視点が出るのでとても新鮮です。みなさん研究への熱意が素晴らしく、学際的・国際的な研究も盛んで、その考え方や研究の進め方は、自身の研究を見つめ直すきっかけや励みになっています。

* YLC プログラム:

高等研究院が実施する若手育成プログラム。「世界屈指の研究大学」の実現に向けて、博士号の取得から間もない優れた若手研究者を任期付きで雇用し、本学の教育研究の発展に貢献する教員を育成・支援する制度。

 

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花粉管を色分けし、 花の中を特殊な顕微鏡で観察した写真

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研究室にて顕微鏡写真を撮影中

 

Q: YLCプログラムに応募したきっかけは?

科学技術振興機構(JST)のプログラム「さきがけ」での研究の最終年度、主人が本学の教員で、長男も小さかったため、育児と研究を両立できるポストを探していました。そのような中、YLC プログラムはライフイベントに柔軟に対応しており、トランスフォーマティブ生命分子研究所 (ITbM)には女性休養室が設置されるなど、様々な支援があることを知り応募を決めました。学内行事で研究室に長男を連れてくると、みな笑顔で受け入れてくれるのを嬉しく思うとともに、研究者を目指す学生にとって良いロールモデルになれたらと思っています。

 

Q: 研究が面白い!と思った瞬間はどんな時ですか?

どんな小さなことでも、いま世界でこのことを知っている、できるのは自分しかいない!という瞬間に出会った時です。私は今、花の奥深くで受精の様子を生きたまま観察するライブイメージングに取り組んでいます。これまで誰も見ることができなかった、受精の瞬間を初めて見た時は、とても感動しました。存在すら知らなかった現象や遺伝子を見つけ、世界が一気に拡がる気持ちを味わえるのは研究の醍醐味です。

 

Q:今だから言える、ここだけの話を聞かせてください。

大学院修了直後、進路が決まっていませんでした。でもイメージングを学びたい気持ちは決まっていたので、指導教官と現所属の教授に無理を言って、一年ほど国立遺伝学研究所と名大を行き来して技術を学びました。毎週違うホテルに泊まったので、金山と伏見の安いホテルに詳しくなりました(笑)。バックパッカーのようにトランクに入るだけの服と物を持って、研究と将来をじっくり考えられたとても大事な経験でした。

 

Q:今後の目標や意気込みを教えてください。

分野にこだわらず常に新しいものを取り込み、私にしかできない研究を極めていきたいです。アカデミアに加え、大学の基礎研究から企業とのコラボレーションもスタートしました。一層革新的な研究を進めるだけでなく、社会全体に貢献する取り組みも並行して進めていきたいです。また、将来、自分の子どもにも感動をちゃんと伝えられるように、美しい映像とわかりやすい言葉で研究を紹介する取り組みも続けていきたいと思います。

  

氏名(ふりがな) 水多 陽子(みずた ようこ)

所属 高等研究院/トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)

職名 YLC特任助教

 

略歴・趣味

2010年総合研究大学院大学生命科学博士課程修了。博士(理学)。国立遺伝学研究所研究員(2010年)、名古屋大学大学院理学研究科JST ERATO研究員(2011~2015年)、JSTさきがけ・名古屋大学ITbM招へい教員(2016~2018年)を経て、2019年より現職。趣味は美術工作全般、鉱物収集、読書。

 

 

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