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VOICE

大学院理学研究科

No.28 佐々木 成江 准教授

My Best Word:自分らしく

 

Q:この言葉を選ばれた理由は?

自分らしくは、人生の中で常に心掛けていることです。研究でも、自分らしさ、つまりオリジナリティはとても重要です。芸術品と同じように、名前を伏せても学会発表や論文を見ただけで、これ○○さんの研究だと分かることを目指しています。また、周囲の人々も自分らしく過ごせるように、異なる個性や感性も大切にできる環境をつくりたいと思っています。

 

Q:先生はどのような研究をされているのですか?

細胞内でエネルギーを産生するミトコンドリアの中にあるDNAの伝わり方について研究をしています。ミトコンドリアDNAには、エネルギー産生に関わる遺伝子が含まれているため、細胞周期に伴って増殖・分配し、分裂した細胞にきちんと伝わらなくてはいけません。また、母親からのみ子孫に伝わるという特徴的な母性遺伝を示します。私は、ミトコンドリアDNAが観察しやすい真正粘菌の特徴を生かして、それらに関する新たな仕組みを発見し、ヒト細胞に展開することでその普遍性を調べています。

 

Q:研究を始めたきっかけは?

高校生1年生の冬に、「遺伝子のはなし」という本を読み、複雑な生命現象の設計図(DNA)がたった4種類のATGCという塩基の組み合わせで作られていることを知り、そのシンプルな美しさに魅了されました。自分でも何か見つけてみたいと思い、担任の先生に「生物の研究者になりたい」とお願いして、急きょ文系から理系クラスに変更してもらいました。

 

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家のことを常に支えてくれる3名のサポーターの方達と

女子学生合宿.jpg
女性リーダー育成のための女子学生と女性教員との合宿

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 研究室にて顕微鏡による細胞観察


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真正粘菌の巨大ミトコンドリア核様体と

高感度なDNA染色法の開発により可視化された
ヒトの微小ミトコンドリア核様体

 

Q:研究が面白い!と思った瞬間はどんな時ですか?

工夫を重ねたことで新しい現象が見えてきた時や、自分が想像していなかったデータから生物の巧妙さが見えた時は、体中にアドレナリンが出ているのが分かります。また、教え子の成長も大学教員ならではの大きな喜びの一つです。

 

Q:先生は、研究はもちろん、女性活躍に関する活動もされており、女性研究者のロールモデルになっていると思います。若い研究者や学生にアドバイスをお願いします。

自分にも憧れの女性研究者のロールモデルがいます。その方々との出会いや、いつでも相談できる環境は自分にとっての大きな財産です。リーディング大学院で実施した女子学生と女性教員との合宿でも、漠然とした不安から自分にブレーキをかけていた女子学生たちが、人生を切り拓きながら楽しんで研究している女性教員の姿を間近に見て、逞しく成長する様子が見られました。まだまだ女性研究者は少ないですが、ぜひ自分自身のロールモデルを探してみて下さい。また、夫選びはとても重要なので、慎重に(笑)。 

 

Q:休日はどのように過ごされていますか?

平日の朝ご飯とお弁当は夫、晩ご飯はサポーターの方(1枚目の写真参照)が作っているので、週末に一度は、食事を作るようにして、母親の味も娘の記憶に刻むようにしています。娘曰く、同じ焼きそばでも、3人とも全く味が違うそうです。

 

Q:今だから言える、ここだけの話を聞かせてください。

大学内に学童保育を設置する際、利用希望者が事前アンケートから大幅に減少して5名となり、赤字運営が決定的になりました。このままでは委託事業者が見つからないのではと、絶望的になったのですが、母から「そんなことを乗り越えられない娘に育てた覚えはない」と言われ、気を取り直しました。説明会で「名大と一緒に日本初の新しい未来を創ってほしい」と熱い気持ちをぶつけ、2件の事業者から応募があったときは本当に嬉しかったです。

 

Q:今後の目標や意気込みを教えてください。

ミトコンドリアDNAの母性遺伝は、性差を認識しやすい現象なのですが、最近、様々な分野で女性(メス)側のデータが少ない状態で、研究や技術開発が行われていることを知りました。海外では、性差の視点を積極的に研究や技術開発に取り入れたジェンダード・イノベーションズに関する政策も進んでいます。女性研究者活躍だけではなく、この分野に関しても、日本が遅れを取らないように取り組んでいきたいです。

 

氏名(ふりがな) 佐々木  成江 (ささき なりえ)

所属 大学院理学研究科

職名 准教授

 

略歴・趣味

福井県出身。1993年お茶の水女子大学理学部卒業。1998年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。ポスドクを経てお茶の水女子大学にて理学部助手、大学院人間文化研究科特任講師。夫と一緒に名古屋大学に赴任し、男女共同参画室特任准教授を経て2010 年より現職。2019年よりお茶の水女子大学准教授、同大学学長補佐も兼務。趣味は、歴史(福井藩の松平春嶽公と橋本左内先生を学ぶこと)。