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Researchers'

VOICE

大学院経済学研究科

No.40 鈴木 智之 准教授

My Best Word:

 

リアリティを大切に

 

Q:この言葉を選ばれた理由は?

私の専門分野は組織経営における人的資源管理・組織心理学です。この分野では組織で働く人を対象にします。毎日、会社で働く人は非常に具体的な問題を抱えながら生きています。そのため、学術研究においても、その具体から離れた抽象的理論だけを扱うのではなく、具体のリアリティを包摂する取り組みが求められると私は考えています。さらに、経営場面の文脈から考えると、単に個々人が抱える日々の問題が解決されることだけでは十分ではありません。企業経営上の成果創出への過程が描ける研究が求められています。これらの個人と組織にとってのリアルな問題を大切にして日々研究に向き合っています。

 

Q:先生はどのような研究をされているのですか?

実証的手法に根付いた組織人に関する研究を行っています。具体的には、組織人になるための初期過程に該当する就職試験の選抜研究、そして、組織人になる過程でなされる人材育成に関するワークプレイス・パーソナリティ研究に力を入れています。

選抜研究については、面接、適性検査、エントリーシートなどの選抜手法について、良い選抜とは何か、というテーマを設けて、一般的には取得が困難と言われる、企業内部にある実際の就職試験のデータを用いた研究を進めています。現在進めている企業との共同研究では10万人以上の就職ビッグデータを扱う、データ駆動型研究を行っています。

ワークプレイス・パーソナリティ研究は、職場(=Workplace)におけるパーソナリティ、日常的に言えば性格を扱うものです。ワークプレイスという状況において、そこで働く組織人の性格因子構造をどのように定義し、人材育成に適用できるのか。このテーマについては日本国内だけではなく、実は世界的にもあまり体系的になされていません。例えば部下の性格を理解できなければ、上司が部下育成を行うのは難しく、解決すべき課題の重要さを日々感じています。こちらも希少な企業内部の大量の社員データを取得したアプローチが私の研究基盤になっています。

 

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 和気あいあいとした授業(上)、ゼミ(下)の様子

Q:研究の道に進んだきっかけは?

大学卒業後、米国系経営コンサルティング会社に入社し、経営コンサルタントとして主に組織・人事、経営戦略の課題解決を行っていました。その後、20代で起業したのですが、確かな知識を身につけるため、社会人大学院生として修士課程に入学して、そのまま会社経営者を務めながら博士課程を修了しました。私の分野ではビジネスと研究がかなり近接しているため、また、恩師の指導のおかげで、ビジネスへの元々の強い興味が大学院での経験を経て研究へと変わっていきました。

 

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会社経営時代の仕事風景(会議の様子)

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会社経営時代の仕事風景(当時のオフィスにて)

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企業経営をしながら大学院で研究していた頃(香港科技大学での国際会議発表)

Q:研究が面白いと思った瞬間はどんな時ですか?

実際に成果が出たときです。最も嬉しいのは長く基礎研究を続けてきた内容が企業経営において活かされたことを実感する瞬間です。選抜研究では、就職試験で内定を得た学生についての追跡調査を何年もかけて行います。追跡調査の最長プロジェクトは9年間に及んでおり、現在も継続中です。入社後のジョブ・パフォーマンスを十分に予測できた面接や適性検査などの設計開発に関わることができたときには非常に嬉しく、研究の面白味を感じます。なお、これは学生にとっての適職発見プロセスを社会の一部で実装していることを意味することでもあります。各企業の就職試験の妥当性が向上すれば、それが社会にとっての個人-組織間の適合調整機能を果たすからです。このように一企業を超えた、幅広い醍醐味を感じられるのは研究活動ならではのものだと思います。

 

Q:先生は、日本の人事部「HRアワード2022」を受賞されていますが、受賞後において印象に残っていることを教えてください。

研究者と実務家の両方からの反響が大きかったことが印象に残っています。受賞をきっかけに共同研究、国際共著、業界団体での講演などの機会が増えました。東京だけでなく東海地域の企業とのつながりも増えました。

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日本の人事部「HRアワード2022」を受賞した著書

その後、2022年度経営行動科学学会賞(優秀事例賞)も受賞

 

 

Q:休日はどのように過ごされていますか。リフレッシュ方法などがあれば教えてください。

休日も仕事をしていることのほうが多いのですが、ほぼ唯一の趣味がフィットネスです。ジムに通ってトレーニングをしています。企業経営者にはトレーニングをして、身体・健康管理に努めている人が多いので、それに影響されて私も20代からパーソナル・トレーニングを受けるようになり、現在も継続しています。

 

 Q:今後の目標や意気込みを教えてください。

組織人になろうとする学生が自分にとって良い仕事と出会い、組織で成長・発達し、経営成果を発揮することを支援するための理論研究とビッグデータを用いた実証研究、さらに企業組織への実装や社会実践を続けていきたいと思います。組織やそこで働く人がダイナミックに変容していくことは非常にやりがいがありますので、今後もそのための基礎研究と応用研究を続けていくつもりです。

 

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氏名(ふりがな) 鈴木 智之(すずき ともゆき)

所属 名古屋大学大学院経済学研究科

職名 准教授

 

略歴・趣味

慶應義塾大学卒業後、アクセンチュア株式会社に入社。同社退職後、起業して会社経営者を務める。その間、東京工業大学大学院に入学し、修士課程および博士課程修了。博士(工学)。東京大学大学院情報学環特任准教授などを経て、2021年4月から名古屋大学大学院経済学研究科准教授。2022年4月から岐阜大学社会システム経営学環准教授を兼務。趣味はフィットネス。

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