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Researchers'

VOICE

大学院情報学研究科

No.45 東中 竜一郎 教授

My Best Word:

 

継続は力なり

 

Q:この言葉を選ばれた理由は?

うまくいかないことがあっても、やり続けていればうまくいくことが多くあるように感じています。最初は絶対にできないと思っていたことでも、やっていくにしたがって解決策が見えてきたりするものだと思います。途中で諦めてしまうとそこでおしまいですが、うまくいかないながらに試行錯誤して少しずつ進んでいくことで何かしら得るものがあると思います。勉強にしても研究にしても趣味にしてもすぐに諦めてしまうとそこまでですが、やりたいことがあるのであれば愚直にそれをやり続けていくことが重要だと思います。

 

Q:先生はどのような研究をされているのですか?

対話システムの研究をしています。対話システムとは、人間と言葉で会話をするコンピュータのことです。スマートフォン上での音声エージェントやコミュニケーションロボット、最近では大規模言語モデルを用いたシステムなどが出現してきており、対話システムが身近になってきていると思います。このようなシステムが人間のように意思疎通ができるようになるための研究をしています。現在は、特に接客等の対話サービスを行うシステムや人間の対話能力を拡張するシステム、対話を通して人間と共同作業を行うシステムに関する研究に取り組んでいます。

 

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対話システムの研究で使用するアンドロイド及びロボットを交えた打合せ

奥の画面の女性型アンドロイド:しょうこさん(Android I)、手前左のロボット(白):CommU(コミュー)、手前右のロボット(青):SOTA 

Q:研究の道に進んだきっかけは?

大学に入ったころは研究者になろうとは思っていませんでした。大学院に進学したときに企業へ長期インターンに行ったのですが、その際に自然言語処理や対話ロボットの研究に触れ、面白そうだと思い企業の基礎研究所に入りました。会社では機械翻訳の研究をしたいと思っていたのですが、機械翻訳は実用化のフェーズに移っておりその部署はありませんでした。代わりに対話システムの部署に配属されました。それ以来、対話システムや自然言語処理の研究に携わっています。

 

Q:研究が面白いと思った瞬間はどんな時ですか?

作ったシステムを実際にユーザに使ってもらい、フィードバックを得られたときは面白いと思います。うまくいった場合はもちろんうれしいのですが、そうでない場合でもその失敗は新しい発見につながります。基本的に研究はうまくいかないことのほうが多いものですが、それも楽しめるので、基本的には実験をしているときは楽しいと感じます。あと学生との研究のディスカッションや学生との原稿執筆も楽しんでいます。もやもやとしたアイデアを形にしていく過程は苦しいですが面白いと思います。

 

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学生とのディスカッションの様子

Q:近年、ロボットに話しかけると答えが返ってくる、または答えを教えてくれるといった音声対話システムの需要が高まっています。今後益々対話システムの技術進化が期待されていますが、システムを作るうえで、気を付けていることはありますか?

人間についての新しい知見が得られるかをいつも考えるようにしています。もちろん工学として動くものができて、それが人の役に立つということは重要なのですが、対話システムを作るということは人間の言葉の扱いに迫る営みでもあります。人間はどうして対話ができるのかについては強い興味を持っていますので、システムが適切に動作することに加え人間の対話についての知見が得られる研究になるようにいつも気を付けています。

 

Q:ゼミや勉強会はオンライン参加可能、VR空間で行うゼミもあり、VRゴーグルも貸し出し自宅からでも研究室にいるような感覚でゼミに参加可能とのことですが、学生からの反応はいかがですか?

反応は比較的よいと考えています。VRを用いることで遠隔にいる学生であってもその場にいるような雰囲気でゼミを行うことができています。学生がどこを見ているかが分かりますし、うなずきや挙手などで意思が分かります。その他VRを用いている理由の一つは、VR上で対話システムを構築するにあたってVRについての知識や感覚を共有しておくためです。一般のウェブ会議システムと何が違うのか、どのようなやり取りが可能かなど、実際に使うことで分かってきます。このような経験はCGエージェントの構築にも役立っていると思います。なお懇親会でもVRを活用しています。

 

Q:今だから言える、ここだけの話を聞かせてください。

今でこそ研究室で毎日のように学生の論文を添削していますが、小さいころから文章を書くことが苦手でした。会社に入ると業務で多くの文章を書くことになりますが、言いたいことすら思い浮かばず、何ページも書かなくてはいけないのにたった数行しか書けないくらいで上司に呆れられる始末でした。ある時上司が急に忙しくなり、一人で論文を書くことになりました。試行錯誤して何とか書き上げ、その論文が採録となったとき、少し自信が付きました。以降、少しずつですが言いたいことが表現できるようになってきたような気がします。

人間は生まれながらにして文章を書くようにできていません。日々よい文章が書けるように推敲を重ねることが重要だと思います。

 

Q:休日はどのように過ごされていますか。リフレッシュ方法などがあれば教えてください。

定期的に映画を見るようにしています。また、コロナ禍に入って以降はできていませんが、下手ながらにゴルフを楽しんでいます。人間ドックの数値が気になってきましたので、ジム通いもそろそろ再開したいと思います。

 

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スイングしている様子

 

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東中杯を主催しました

 

 Q:今後の目標や意気込みを教えてください。

着任してから4年目を迎えました。研究室のメンバーも増え、層が厚くなってきました。大規模言語モデルの登場は、対話システムの性能を飛躍的に押し上げる可能性があります。これから対話システムの研究をより一層加速させていきたいと考えています。

 

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氏名(ふりがな) 東中 竜一郎(ひがしなか りゅういちろう)

所属 名古屋大学大学院情報学研究科

職名 教授

 

略歴・趣味

2001年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程、2008年博士課程修了。博士(学術)。2001年日本電信電話株式会社入社。2020年より名古屋大学大学院情報学研究科教授。NTT人間情報研究所客員上席特別研究員。慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授。対話システムの研究に従事。著書に「Pythonでつくる対話システム」(オーム社)、「AIの雑談力」(KADOKAWA)、「対話システムの作り方」(近代科学社)など。

趣味は外国語を学ぶこととラーメン屋巡り

 

 

【関連情報】

2023/12/4 プレスリリース「AI Lab、大規模言語モデルを利用した複数の接客ロボットの自律・遠隔制御の実証実験を実施ー対話ロボットからオペレータへ会話を引き継ぐ際の対話要約の有用性を確認ー」

2022/5/9 プレスリリース「『大人になるってどういうことですか』~高校生AIによる18歳成人についての対談が実現~」

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