
総長っていったい何をしているのか、疑問に思っている皆さんも大勢いるかと思います。ここでは、私が日々取り組んでいる仕事やその中で感じたことなどを、自由闊達に紹介していこうと思っています。
8月18日
お盆休みは終わりましたが、月曜日の今日は、本学関連の展示の視察ということで、終日大阪万博に行ってきました。
朝早かったせいか、新幹線や地下鉄などは思ったほどは混んでおらず、出展者のパスをもらったおかげで混雑した入り口とは別のところから入場して、スムーズに会場に入ることができました。
名古屋ほどではないですが、本日は大阪も晴れていて、日差しがとても強かったです。最初の目的地は、WASSEというメッセで、そこで開催中の「わたしとみらい、つながるサイエンス展」というイベントが目当てです。入り口から10分ほど歩いたところにあり、日差しを避けるために大屋根(リング)の下を通っての移動です。途中多くのパビリオンがあったのですが、日本の企業などが出しているものは予約がないと入れません。そこで予約が要らずに、かつ空いていたいくつかの国のパビリオンをのぞいてみました。どこも映像中心で、土産物売り場が一番充実している、という感じだったのは残念でした。ただ、人気のイタリア館などは行列が朝一番からできていて、相当の待ち時間だったので早々に諦めました。しっかりと実物が来ているところは本当に人気です。
イタリア館のすぐ前が、お目当てのWASSEです。このイベントは文部科学省が主催したもので、会場を8月14日から19日まで借りて、COI-NEXTなどに採択された課題の発表の場としています。本学からは、「セキュアでユビキタスな資源・エネルギー共創拠点」通称「変環共創拠点」が、白馬村で行なっている二酸化炭素回収実証実験のコンテナをそのまま会場に持ち込んでのデモ、非常に目立っていました。松田亮太郎拠点長、長野方星工学研究科教授など教員やURAの方々、さらには名古屋大学博物館のボランティアグループの学生さんなど多くのメンバーが集まっていて、幅広い年代層のお客さんを惹きつけていました。
写真は、コンテナの遠景、もう一枚は松田拠点長、一緒に行った佐宗副総長、そして学生さんらと撮ったものになります。
急ぎスタッフ専用の食堂で昼ごはんを食べて、次にバスで向かったのが、地球環境産業技術研究機構(RITE)が主催する「未来の森」というイベント会場です。バックヤードを通ることもあり、メイン会場からそれほど離れているわけではないのですが、バスでの移動のみです。
こちらでは、ムーンショット型研究開発事業の目標4「2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」に加わっている研究機関のうち、代表のRITE、そして九州大学と名古屋大学が展示を行なっています。テーマは、大気中の二酸化炭素の直接回収、固定・利用です。
写真をアップしたRITEの大規模な回収プラントが置かれている傍に、本学の則永行庸教授が行なっているLPGからの冷熱を利用した二酸化炭素回収装置が置かれていました。則永さんも学部学生とともに装置を動かすために来ていて、後で詳しい説明を受けることができたのはよかったです。なお、装置については、本年の2月8日の総長自由闊達通信でも説明をしてあります。こちらも、則永グループの展示の前で、則永さん、佐宗副総長らと撮った写真をアップしておきます。
この施設全体は、ツアーで見て回るのですが、しっかりと名古屋大学の名前が印象に残るツアーでした。
最後に、本学関連の企業の展示があるということで予約をとってもらった大阪ヘルスケアパビリオンを見て、万博ツアー終了です。なお、大阪ヘルスケアパビリオン、さすがにお金がかかっていて見どころ満載でした。そこでは25年後の自分に会うことができます。
なんにせよ、疲れた1日でした。会場では合計10km以上歩いたようです。
8月8日
6日は中津川で講演を終えてから、名大にいったん戻って、夜に空路で仙台入り、7日、8日と東北大学で行われた日本学術会議第三部夏季部会に出席してきました。第三部は理工系の研究者の集まりになります。
ちょうど仙台は七夕祭りの真っ最中、ホテルが高くて予約を取るのも一苦労でした。本日の帰りの新幹線もお盆の帰省とぶつかって大混雑、本当に誰がこの日程にしたのでしょうか。
7日は、午前中は学術会議をめぐる問題や、博士人材育成などについて議論をし、午後は、高校生たちを招いての講演会と座談会がありました。公開シンポジウム「研究者になって世界を駆け巡ろうⅡ~研究者の卵たちと共に未来を描く~」です。講演会では、山形大学の有機ELで有名な城戸淳二さんの話が破天荒と言っても良いぐらい並外れて、また面白いものでした。高校生の心に非常に響いたと思います。他の先生方も、ご自身の研究をみなさん熱く語っておられ、高校生からたくさんの質問が出ていました。
第二部の「研究者と共に考えよう」は、いくつかのグループに分かれて、我々学術会議のメンバーと高校生の対面グループディスカッションでした。みなさん非常にモチベーションが高く、たくさんの質問を我々研究者に投げかけ、終始和気あいあいとした雰囲気でディスカッションは進みました。
8日は、午前中は第三部と関連する委員会の報告や学術会議の今後の在り方、特に次期の会員の決め方などについて報告と議論がありました。
夏季部会は午前中で終了ですが、この機会にということで、放射光施設ナノテラスと災害科学研究所の見学会が催され、参加してきました。青葉山に広がる学内の奥の方にナノテラスはあり、次の稼働に向けてのメンテナンス中でしたが、その分、中をじっくりご案内いただきました。まずは立派な施設に圧倒されました。通常であれば中心のリングから引き出されているビームラインのあたりも放射線管理区域なのですが、ナノテラスはしっかりと遮蔽しているので、線量計などをつけずに入ることができるとのことで、ほぼ一周しっかりと見学させていただきました。
ビームラインが引き出されている写真をアップしておきます。写真の真ん中、地面からそれほど離れていないところに手前に向かってまっすぐ伸びている細見のパイプがビームラインです。壁の向こうのリングから引き出され、手前の検出装置までを結んでいます。
ナノテラスですが、本学もコアリションに参加して200時間の使用の権利を持っています。すでに活発に利用しているそうです。
施設としての課題は、今のところ28本取れるビームラインのうち10本だけしか設置されておらず、今後18本の早急な整備が望まれるとのことでした。
災害科学研究所では、教員の方が、本人が考案した新たな安価な免震構造について、プレゼンをしてくださいました。そのお話の中身も興味深かったのですが、特に熊本、能登などの最近の地震での木造建築への被害が、建築基準法の耐震基準が変更された1981年、そして2000年を境に大きく変わっていることがすごく印象的でした。データによると2000年以降は、ほとんどダメージを受けていません。一方、倒壊した建物はほとんど1981年以前とのこと、しっかりとした備えの大切さが浮き彫りになっていました。
8月6日
昨日から岐阜サマー・サイエンス・スクール(GSSS)に参加のため、中津川に来ています。
このGSSSは、光ファイバー通信を最初に実現されたことで有名で、東工大の学長を務められた末松安晴先生が中心となって、中津川市の教育委員会と連携して30年間続けてこられた中学生を対象としたスクールです。コロナ禍前までは泊まりがけで行っていたのですが、現在では、オンライン、そして今回は会場での参加も含めたハイブリッドでの開催になっています。これまでの総参加者数は3030人、初期の参加者の中には研究者になった人もいます。
今回は30周年記念ということもあって、2000年ノーベル化学賞受賞者、白川英樹先生をお迎えしての特別なイベントとなりました。昨日は、30周年記念式典が最初に挙行され、引き続き白川先生の講演がありました。セレンディピティをテーマにご自身の導電性プラスティックの発見のお話を交え、わかりやすい内容でしたので、中学生にもよく伝わったと思います。
私自身の講演は本日朝、トータル90分という時間をいただき、「ビッグバンの残光~宇宙マイクロ波背景放射~」というタイトルでお話をしました。今回は中学生が相手ということで、週末に栄の松坂屋の中にあるハンズに行っていくつか買い物をして、それを使って簡単な実験をやってみせたりしたので、生徒さんの記憶に残ったのではないでしょうか。講演後は、たくさんの質問をもらいました。
中2くらいだと、サイエンスに興味を持つ生徒は男女比ほぼ一緒です。今回のスクールでもその通りでした。中学の後半から高校にかけて、サイエンス好きの中で女子生徒の割合が減ってくるとのこと、今回のようなスクールなどを通じて、科学の面白さを中学生、高校生に伝えていかなければならないと強く思わせてくれるイベントとなりました。30年間続けてこられた末松先生たちには、本当に脱帽です。
末松先生、白川先生と一緒に撮った写真をアップしておきます。
8月2日
あっという間に8月になってしまいました。本当に暑い日が続いています。今日は名古屋も特別に暑く感じます。
土曜日ですが、イベント2つに参加してきました。
午前中は、コモネで行われた、Engineers meet Girlsというイベントでご挨拶をいたしました。こちら、名古屋市と本学同窓生である遠山寛治さんが社長を務める株式会社Sonoligoが主催のイベントです。仕掛け人は運営を担当した株式会社EmEcoの清水季子社長になります。清水さんは東大の工学部を卒業したあと、日本銀行に入り、理事まで務められた方です。このイベントは女子小中学生を対象に、1日がかりで、グループに分かれて名古屋大学の研究室を訪問したり、ものづくり体験をしたりするものですが、トヨタレクサスの開発責任者を務めらえた加古慈さんの講演には、全員がコモネのサンドシアターに集まりました。
昼からは、本学のエクゼクティブプログラム、NExTプログラムの修了生勉強会に参加しました。講師に本学経済学部卒業生の嶋聡さんをお迎えして、オークマ工作機械工学館のオークマホールでの実施です。嶋さんは、経済学部を卒業後、松下政経塾に2期生として入塾、その後衆議院議員を3期に渡って務められた経験をお持ちで、そのあとには、ソフトバンクの孫正義さんに要請されて、ソフトバンク社長室長となり、孫正義の参謀と呼ばれた方です。講演の前に、少し懇談する時間を取っていただき、さまざまな裏話を聞かせてくださいました。裏話ですから、もちろんここでは内緒です。
さて講演ですが、「孫正義の参謀が語る「AI革命の加速」と企業経営」というタイトルで、経営のお話を中心に、非常に勉強になる1時間半でした。今回の聴衆の多くが、企業の次世代の経営人材ということで、嶋さんからは、社長室長としてのご自身の経験をもとに、CEOに働きかけて会社を変えていこう、というメッセージが皆さんに送られていました。
お話の途中では、名古屋大学をどのように世界トップレベルにするか、にまで触れていただきました。課題は、完全英語課程の不足と生活支援・国際ブランドの限定性とのことでした。
このような講演、是非名古屋大学の学生にも聞かせてあげたいと思い、来年度以降の授業をお願いできないか、考えています。
嶋さんは講演終了後すぐに新幹線でお帰りになったのですが、残った皆さんは、コモネを見学、その後時間のある方が残られて、懇親会を持ちました。懇親会を拝見していると、相当ネットワーキング、進んでいるようです。